博物館がゲームセンターに!異色の企画展「ゲーセンミュージアム」開催秘話をインタビュー
名古屋市博物館で開催中の「ゲーセンミュージアム」。ピンボールやスペースインベーダー、懐かしのメダルゲームにワニワニパニック、各種アーケード機などおよそ70台のゲーム機に実際に触れて遊ぶことができる、文字通り「博物館がゲームセンターになった」大変楽しいイベントです。
公立博物館では異色の企画展となった「ゲーセンミュージアム」についてのお話を、展示担当者である名古屋市博物館 学芸係長 武藤真様にお伺いいたしました。
―― ゲーセンミュージアム開幕から少し立ちましたが、週末には一時入場制限がかかるほどの盛り上がりになっています。
入場者数もさることながら、小学生から年配の方まで幅広い世代にご来場頂いています。ゲームというものがみんなの身近にあって、どの世代でも楽しまれているんだなと言うことを改めて実感しました。
―― 公立博物館とゲームという異色の組み合わせ、大胆で大変面白い企画ですよね。この企画はいつどのような形でスタートしたのでしょうか?
日本ゲーム博物館を運営している小牧ハイウェイ企画さんと企画会社のダズさん(両社ともに今回の企画協力)からお話を頂いたのがきっかけです。初めて打ち合わせをしたのは2017年頃だったと思います。
最初はゲームの歴史やテクノロジーに関する展示という形でご提案頂いたと思うのですが、名古屋市博物館は歴史系の博物館なので、テクノロジー面などの科学館的なアプローチは難しい。そこで、こちらから「ゲームをとりまく想い出を絡めるような形の展示ではどうか」とこちらから提案し、具体的に進めていくことになりました。
―― もともとは昨年(2020年)の開催予定だったそうですが……。
そうなんです。もともと2020年開催予定で進んでいたのですが、コロナ禍の影響もあって1年延期となってしまいました。展覧会としてやるやらないを考えるギリギリのタイミングだったのですが、記者発表の時期はまだ学校が休校になっていましたのでこのまま開催するのは難しいといったん中止と判断せざるを得なかったです。
―― 名古屋市博物館ではここ最近「ゴジラ展(平成29年7~9月)」「スヌーピーミュージアム(令和元年6~9月)」「アンパンマン展(令和2年1~3月)」など、カジュアルで親しみやすい特別展が増えているように感じます。
博物館の企画展にはサブカルチャーを題材にした全国を巡回している展覧会と名古屋市博物館として独自に企画するものがあり、これらを年間スケジュールの中でバランスよくやっていこうというのが基本になります。
これまでのゴジラ展などは全国巡回のものになりますが、今回の「ゲーセンミュージアム」は名古屋市博物館が独自に企画から関わった展示になります。これまでの自主企画だともっと硬いテーマとなるのですが、今回のような「遊びの文化」を取り上げたというのは異色であるかなと思っています。
―― 今回は「遊べる」イベントということで、展示するゲーム機のセレクトや展示方法など、随所に様々な工夫がされているように思います。どのようなところこだわりをもって展示をされていますでしょうか?
会場全体をディスプレイと考えて、時代ごとに流行した形の遊び場やゲームセンターを再現したというのがこだわったポイントになります。ゲーム機そのものの歴史や芸術性といった部分だけではなくて、来館者の人たちの思い出に寄り添うような展示にしたいなと。
また、名古屋市博物館は歴史系の博物館ですので、名古屋タイムズをはじめとした過去の新聞雑誌記事などをあわせて展示し、当時の社会状況やどんなものが文化として流行っていたのかという点を思い出に照らし合わせて見てもらえるようにしています。この辺りは公立博物館としてやるべきことだと考えています。
―― 武藤さんや企画メンバーがこだわって入れたゲーム機とかはありますでしょうか?
メンバーそれぞれに思い入れはありますが、メンバー内で盛り上がったのはゲームセンターあらし関連のコーナーですね。あれは作るべきでしょうと。
―― なるほど!確かに「炎のコマ」が生まれた「ギャラクシーウォーズ」もありましたね! はじめて本物見ました。
実はギャラクシーウォーズは当初のラインナップになく、他の機種と入れ替わって設置されることになりました。結果的にゲームセンターあらし関連の機種が充実しました。
他にもエレメカ(機械式のゲーム機)とかピンボールとか自分が知らない世代のゲーム機もたくさんあるので、逆に新鮮な気持ちになれますね。
―― 私も古いゲームをたくさん遊ばせてもらい、本当に楽しい気持ちになれました。しかし、今回の企画を進めるに当たっては様々なご苦労があったと思いますが、特に大変だったのはどのようなことがありましたでしょうか?
やはりこのご時世ですので、コロナウィルスの感染防止対策が苦労しました。今回の展示は「遊べる・触れる」展示ですので、博物館向けガイドラインだけではなくゲームセンター向けの感染防止ガイドラインにも従う形で運営しています。混雑時の入場制限についても、ゲームセンターのガイドラインに示されている基準で行っています。もちろん、スタッフが筐体の消毒に回るなどの対策を講じております。
もう一つ大変だったのが風俗営業法の許可をとることでした。実は名古屋市博物館は交通安全運動の出発式の場所になっているなど警察と協力関係にあるんです。そこで、今回の企画を進めるにあたって警察に事前に相談したところ「風営法の許可をとってください」となり、諸処の調整を行って許可を取得しました。このように風俗営業法の許可をきちんととって行う博物館でのゲームセンター企画は史上初めてではないでしょうか。
――武藤さんがぜひこれは遊んで欲しい!というゲーム機はありますでしょうか?
立場的には全部遊んで欲しいとしか言いようがないですね(笑) とはいえ、70台の中にはきっと昔の思い出に繋がっているゲームがあると思いますので、まずはそれを再体験してほしいなと思います。その上で、ぜひ自分の世代とは違うゲームも一つ二つと体験してもらって、違う世代のゲームのことも新しく発見して、ゲームの魅力をさらに深めてもらえればと思っています。
――ちなみに始まってから1週間で人気があったゲームはどれでしょうか?(取材日は6月9日でした)
どちらかというと比較的最近の世代のゲームが集まっている2部屋目が人気がありますね。音ゲーやグランツーリズモSPORT、ラピッドリバーなどの体感ゲームはたくさん人が並んでいました。家族で楽しめるゲームに人気が集まっていたように感じます。
みなさんゲームセンターと同じようにちゃんと列を作って順番に並んでもらえているので本当にありがたいです。
――「ゲーセンミュージアム」、これから夏休みに向けてますます盛り上がりを見せそうだなと感じました。この「ゲーセンミュージアム」の後は、武藤さんとして博物館でやってみたい企画は何かございますでしょうか?
内容はまだまだこれから考えるところですが、これまでも「娯楽や遊び」に繋がるような企画を考えてきましたのでそういった方面の企画をこれからも考えていきたいと思います。
―― 最後にこの企画に対する思いと、これから来館したいと考えている方へのメッセージをお願いいたします。
博物館でゲームセンターを再現し、思い出を再体験するに留まらず新しい発見をしてもらいたいという思いで今回の「ゲーセンミュージアム」を企画しました。全体の会場が出来上がってみると博物館全体が一つの「遊び場」みたいになっているんだなと感じました。思い出に浸る場所と言うことも含めて、新しい博物館の魅力を発見してもらえる場になればと思っております。
―― ありがとうございました!
実は既にプライベートで2回遊びに行っている「ゲーセンミュージアム」。武藤さんのお話を聞いてまた足を運びたくなってきました。
また、先日お伺いした際に常設展も一緒に拝見したのですが、今見ると本当に楽しいんですよね。ゲーセンミュージアムの入場券を購入すると常設展ゾーンにも見ることができますので、ぜひ一緒に足を運んでもらって博物館の楽しさを改めて感じて頂ければと思います。
ゲーセンミュージアムは8月29日までの開催予定。夏休み期間中の一部日程では事前予約が必要となります。詳細についてはゲームセンターミュージアムのホームページまたは公式Twitterにてご確認下さい。
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