『いのちのとりで裁判に学ぶ わたしたちの「生活保護」』石黒好美さん【ナゴヤビトブックス #28】
ナゴヤに縁のある様々なジャンルの書籍を著者へのインタビューを通じてご紹介する「ナゴヤビトブックス」。第28回は、石黒好美さん著書の『いのちのとりで裁判に学ぶ わたしたちの「生活保護」』(風媒社)をご紹介します。著者の石黒好美さんに、著書についてお話をお伺いしました。
石黒好美さんご経歴
1979年岐阜県生まれ。岐阜大学地域科学部卒業後、印刷会社、IT関連会社勤務の後、障害者・生活困窮者の相談支援などに携わる。日本福祉大学福祉経営学部(通信教育部)を経て社会福祉士に。現在は主にNPOや市民活動、福祉、医療などの分野で執筆。
――本の執筆を手がけられるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
もともとホームレス状態にある方や生活に困りごとのある方を応援
「生活保護」について、専門家や行政で関わる方、当事者と対話するような一冊
――著書『いのちのとりで裁判に学ぶ わたしたちの「生活保護」』はどのような内容でしょうか?
知っているようで知らない「生活保護」という制度について、弁護士、研究者、生活保護を利用して暮らしている方、元・名古屋市の職員で生活保護行政に長く携わっておられた方など、さまざまな立場の方から「生活保護」について語っていただいた本です。ほとんどすべてのページを対談形式でまとめました。いろいろな立場の人と対話するように読んでいただけたらと思っています。
特に、国が「物価の下落率」を根拠に生活保護費を引き下げるという判断をした際に、真っ先にその矛盾に気づき指摘していただいた元・中日新聞記者の白井康彦さんの解説が読みどころです。各地の裁判での勝訴判決の根拠ともなっているロジックを、どこよりも分かりやすくまとめています。
専門家や当事者などの生の声をインタビュー形式で載せているというのも、とても興味深かったです。
――この本を出版したきっかけは何だったのでしょうか?
2013年に決定された生活保護費の引き下げを不当として、全国で1000人を超える人が裁判を起こしていました。(「いのちのとりで裁判」と呼ばれています。)生活保護は日本に住む人の最低生活の基準を決める重要なものなのに、その基準を決める手続きや判断の方法に大きな問題があったと言われています。
各地の裁判を見ていて、重要な問題を扱っているのにあまり注目されないのはなぜだろうと考えました。私たちは生活保護についてほとんど知らないのではないか、あるいは誤解や偏見に満ちたイメージしか持っていないのではないかと考えました。
裁判の内容を理解するためにも、その前に生活保護とは何か、どんな制度で、どんな価値があるのかを私たちが理解する必要があるのではないかと考え、この本を書こうと思いました。
この「いのちのとりで裁判」は、生活保護をうける方のみでなく、日本という国に住む私たちすべてに関係しているのだなと、勉強になりました。
――著書『いのちのとりで裁判に学ぶ わたしたちの「生活保護」』の裏話をお聞かせください
名古屋市で生活保護を担当されている若い職員の方が読まれ「仕事で行き詰まっていたが、生活保護法制定時の理念などが分かり、仕事にもやる気が出てきた」という感想をいただいた時は本当にうれしかったです。
消えそうな小さな声を文字にしていきたい
―― これから書いていきたい本はどのようなものでしょうか?
福祉や市民活動の分野を中心に、声に出しづらいこと、時には消えそうになってしまいそうな小さな声を文字にしていきたいと思っています。
――石黒さん、ありがとうございました!自分たちの生活、そこから日本という国全体をみて深く考えることができ、とても勉強になりました。今後も、石黒さんが拾い上げる声が文字となってたくさんの方に伝わっていきますよう、応援しております!
下記から『いのちのとりで裁判に学ぶ わたしたちの生活保護』の目次と「はじめに」を読むことができます。
https://note.com/ourseikatsuhogo/n/n80a590ca0249
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