シンボルツリーの存在が優しい間仕切に
エントランスを入ってまず目に入るのは、インドアグリーンて呼ぶにはあまりに大きなフィカス ストリクタという樹木が植わっている様子だろう。広く採られた玄関土間の中ほど、ちょうど入ってきたお客様と、中で仕事をするスタッフの視線を心地良く切る役割をするシンボルツリーとして配される。
オフィスという空間は来客に対しては一旦閉鎖的になる事が多い。雑然とした机上や、電話やスタッフ同士の会話等を遮断する為であるが、ここでは敢えてオフィススペースが全て一度に見渡せるプランにしていて、それらの部分をもお客様に対してのプレゼンテーションに変えているのかも知れない。
シンボルツリーの存在が優しい間仕切を担う事で、解放感を損なう事なく良い距離感を保っている。ツリーの中には小鳥や巣箱のフィギュアが点在し、癒しや話題のキッカケづくりに一役買っている。
その同じ空間に一際目を引く薪ストーブがどっしりと構える。多雪地域であるここの冬場に大活躍するのだが、不思議と夏場に見ていても不快さは感じない。特に冬場はここで茶を淹れたり、ピザを焼いて来客に振る舞ったりする。オレンジに揺れる炎がインテリアにあるという事が、体感的な暖かさだけでなく、心理的な豊かさをもたらしてくれるのである。火を点けない夏は憧れを抱かせる実用的なオブジェとして存在感を放っている。
打合せ・商談スペースへの入口はその反対側にある。黒板塗料で仕上げた壁には、季節やイベントに合わせた味わいのあるチョーク画、ディスプレイの為の長い棚板が3段、訪れる人を招き入れるように配されている。ショールームの凡ゆる場所に設置されているのだが、作家により銅板で製作されたオリジナルの照明器具(ブラケット)もアクセントになっている。
少し奥に進むと打合せ室ニ間に挟まれる形でキッズコーナーがあり、来られるお客様の年代には不可欠な存在となっている。単にクッションシートが敷かれ、使い古された玩具が散らばるのではなく、部屋の真ん中に「遊べる大きなオブジェ」や黒板塗料の壁、玩具を整然と収納されるロッカーで構成され、「コーナー」ではなく、「ルーム」として準備されている。写真の「オブジェ」も社長のこだわりにより、とある画家が数日かけてペインティングした物。異質ではあるが、空間のロジック(仕掛け)として上手く溶け込んだ印象だ。
地方の工務店の店構えとして特徴的でユニークな部分は、これだけではない。
安田工務店について
ライター:北澤武宏について
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