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社長ではなかった男性⑪

遡る事、一緒に有馬に行った日。
突然、彼に言われました。
「相談所のお断りって、えぐいよね。」
「え?」
「俺が所属している相談所はね、その人との先がない場合はどんな場合でもお断りっていう一言で終わらすらしいよ。
例えば、相手が生理的に無理でもお断りだし、仕事が忙しくて途中退会してもお断り。突然死んでもお断りなんだって。」
「そうなの?
お相手は亡くなりましたとか退会されましたとか一言くらい相談所経由で教えてくれないんだ??」
「お相手からお断りの連絡が来ました。今回はご縁がございませんでした。の一言で終わりなんだって。
俺の相談所はね。
だから…
今の関係で突然もし俺が死んだら、「なんだよ、あの最低くそ野郎!突然断ってきやがって!」ってりおなちゃんに思われながら死ぬ事になるな。笑」
この返しは、確か…
「そりゃこの状態で突然お断りされたら死ぬほど恨むね!」って笑いながら応えた気がする。
今、思うとこの時には既に彼は腫瘍の事を知っていたのかもしれません。
彼とのメールはその後も毎日続きました。
腫瘍の件には触れず、いつも通りのバカみたいな会話。
私自身も、この期間で、「この時にはこうする」みたいな、自分の進退を、多分考えなければいけなかったとは思うのですが…
正直、現実逃避していました。
色々と考える事を放棄していました。
万が一、悪性ならば…
良性であっても…
いや、今考えても…
「りおなちゃん!
いつもの焼肉屋行こう!!!」
彼がご飯に指定してきた日は、
検査結果が分かる日の夜でした。
結局、何も考えを持たずに会う約束をしました。

約束の日。

「では今から病院行ってくるね!!」
以降メールは来なかったけれど、ドタキャンにならなかった段階で「良性だったんだ…」と安心しましたショボーン

いつもの焼肉屋さんに現れた彼は、予想通り穏やかな顔をしていました。
いつもの席に、いつも通り向かい合い、いつものメニューを頼み、いつも通り他愛無い話をする。
だけど、いつもオシャレで容姿には気をつけている彼の頭には白髪が目立っていました。
「やばいやろ!?笑
染めに行くん忘れてたわ!!!笑笑」
 
そして、病気の件を細かく教えてくれました。

ざっくり言うと、

副鼻腔の腫瘍は良性!!!

だけど良性腫瘍であっても完全摘出がベストだとの事でした。

腫瘍を摘出する為には先に元々持っている心臓の病気(心臓の件は前に聞いていて、こちらはそんなに急ぎではないらしいが)を治してからになる。

という事で、今後、心臓の手術→副鼻腔の腫瘍摘出という長期戦になるらしく。

今回、副鼻腔に腫瘍がある事は歯医者のレントゲンで分かったんだって!!

帰りの車で、レントゲン写真のコピーも見せてもらいましたが、想像以上の大きさで、良性といえど、もう絶対に一刻も早く摘出した方がいいと思いました!!!

もはや婚活うんぬん言っているレベルじゃない…

彼から、
「全部話せて良かった。
本当は、このまま結婚出来たらなぁと思っていたんやけど、IBJのルール通りあと3ヶ月後に結婚してください!なんて言われへんし…
新婚早々、俺の病気にも付き合わせられへん…
入院もせなあかんし、苦労をかけたくない。
でも、未練たらしくも、自分から、りおなちゃんを絶対切りたくないねん…」
そして…
「出来れば私から相談所に断りの連絡を入れて欲しい。」
と言われました。
仮交際の期間が定められているIBJでは、結婚を見据えた真剣交際に移行出来ないなら…
お断りしかもう選択肢が…無いのです…
そして。
デートの翌日、私は…
相談所にお断りのメールを入れました。
彼の連絡先は消さずに。笑
以上で、長かった社長ではなかった男性は一応、完になります。
なんだか呆気ない幕切れとなってしまいましたが…
長い間、彼とのやり取りにお付き合いくださいました皆様、ありがとうございました真顔
社長ではなかった男性     完

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