アイディアが形になるまで/私のアイディア論

大橋尚貴

新しい製品が世に出ると「あ!これ私も考えてた!」「このアイディアは私も持っていたのになあ」という声を聞くことがあります。しかし、面白いアイディアを思いつくことは誰にでも出来ること。ただの思いつきに過ぎないものを形にして世に送り出すことこそが本当に大変なところだと思います。これ、本当に大変なんです。
今回話したいのは、そんなアイディアが形になるまでの私の持論について。簡単な一連の流れは、以下の通りです。

前回話したメモについての話は、上図の「ひらめく」にあたります。次に「整理」「熟成」の繰り返しを経て「実行」に移し、世に出る形となります。では、一つずつ説明しましょう。

 

1、ひらめく
アイディアの種。いつ面白いアイディアが頭に浮かぶかわからないので、常にメモするようにしています。

とにかくメモします。

 

2、整理
ひらめいた時に取ったメモは、殴り書きだったり一言だけだったりと、そのままでは使い物になりません。一度、メモが新鮮なうちに整理しておきます。私が最も好きな工程。具体的には、以下の2通りの方法で整理します。

・紙面に落とし込む
私の場合、まずは大きめの紙に書き込んで頭の中を整理します。整理することで、どのようにしたらより面白くなるか、実現するための具体的な方法などが浮かび上がり、より現実感を帯びていきます。
こうしたらもっと面白くなるんじゃないかと、どんどん理想が広がっていく様子はとても楽しいものでして、気持ちが高ぶって筆が乗りに乗ってしまいます。

・試作品を作る
私は文具・雑貨クリエイターなので、この段階で試作品を作ることが多いです。革小物程度であれば、レザークラフトの心得はあるのでサクサクっと。
実際に、試作品というゴールに近い形に落とし込んで整理することで、紙面に広げて検討していた時には見えなかった改善点が見えてきます。私の場合、広げ過ぎた理想を注ぎ込むことが多いので、大抵は試作品作りを通して削っていくことに。この工程は、自分のアイディアが洗練されていく様子が目に見えるので、やはりとても楽しんでしまいます。作るという行為自体も好きなので、寝る間も惜しんで没頭することもしばしば。
試作と検討を繰り返し、この時点でのベストな状態に持っていけたら、一旦計画を寝かせます。満足に感じていても、世に出すのはまだ早計。

 

3、熟成
整理することで膨らみに膨らんだアイディアは、一旦寝かせます。寝かせる期間は1ヶ月が目安。この工程を熟成と呼んでいるのは、寝かせた後にアイディアが化けることが多いためです。

寝かせる際には、アイディアを書きなぐったノートを全部ファイリングしています。あとから読み返すことが目的なので、こんなアナログ的な方法がベスト。綴じてから1ヶ月ほど経ったら読み返し、試作品をこねくり回しながら再検討に入ります。

整理の工程でアイディアを膨らませている時は、どうしても楽しくて興奮気味なので客観的な視点が失われてしまいます。少し時間を置いて冷静になり、客観的な視点を持ってから改めて検討すると、以前は見えていなかった問題点が見えてくることもしばしば。改善できるのであれば改善し、より良いものに仕上げます。
ただし、改善の余地がないということもありますので、その場合はお蔵入り。冷静になってみると、思ったより面白いアイディアではなかったということは割とあります。

一旦寝かせることで進化したアイディアはさらに寝かし、さらなる熟成を図ります。幾ばくかの熟成を経て、納得のいくモノに仕上げることができれば、ようやく世にお披露目する準備に取り掛かることが出来るのです。私の場合、革小物のような製品開発がこれにあたりますので、試作品を作っては寝かし、作っては寝かしと、とても念入りに「整理」と「熟成」のサイクルを回します。下手なものは世に出せません。
ちなみに、製品を世にお披露目するための準備も大変な作業になるので、またいずれ話しましょう。

以上、私が考えるアイディアが形になるまでの簡単な流れを話させていただきました。若造の語りではありますが、少しでも参考になる部分があれば幸いです。

さて、長々と語ってしまいましたが、実はこの考え方は、ある書籍に大変影響を受けています。

外山滋比古氏の「思考の整理学
私のモノの考え方に大きな影響を与えてくれた一冊。大学生の頃、学内の売店で購入したものです。何度も読み返しました。
上述のアイディア論は、この書籍内で語られている内容を私なりにカスタマイズしたもの。かなり簡素化していますので、より深く自分に落とし込みたいという方は読む価値ありです。私個人としては、誰もが一度読むべきだと強く推したいほど。是非。

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大橋尚貴

文具・雑貨ブランド「尚貴堂(shokido)」として活動中 文具・雑貨が大好きなので、自分のブランドを立ち上げました。 ニッチなモノだけれど、多くの人が喜んでくれるようなプロダクトを生み出し続けます。

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