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「大人のカフェスタイルキッチン」HS邸 Vol.3

これもまた計画初期の話。クライアント夫婦はレンジフードが付く事を極端に嫌っていた。会う以前から壁抜きか床抜きの換気扇とし、その存在感を消したいという要望が入っていた。一から建てる建築の場合、設備工事(建築工事)は何とでも調整が可能であるが、今回のようにリノベーションという場合には様々な制約が付き物である。前述の壁・床抜き換気も例外ではない。壁抜きの場合、真裏の壁から直接外部に排気するか、壁厚を増やして中にダクトを設け、床下方向に抜いて基礎高レベルで排気する方式がある。

ただ今回の場合、その両方に問題があった。というのはキッチンの背後の壁の向こう側は外部ではなく、居室(洗面脱衣室)が控えており、直接外部に排気出来ない為難しく、一旦床下に下ろすにしても洗面室側に30cm以上の出っ張り、言わば大き目の柱型の様な物が不自然に出来てしまう。それに加えてキッチンから外部への距離が長くなってしまうので、後々のメンテナンスを考えるとデメリットしか無いという結論に至った。それでもやはり「カッコいい」もの、という事でアリアフィーナの「フェデリカ」のブラック。存在感を消したいというコンセプトとは真逆の解答だが、壁付けタイプになるなら敢えて目立たせて、周りのインテリアに溶け込む様にした。納品数で1位2位を争うくらいの人気機種ではあるが、機能性は充分でメンテナンス性や普段の清掃効率が良い。

クックトップは海外品の定番、AEG(アーエーゲー)の物にしている。グリル無し天板操作のシンプルな機能が売りのレギュラー商品である。やはり見た目も美しく、掃除がとてもしやすい。クライアントのお眼鏡にも叶ったようだ。
家電(電子レンジ・炊飯器)を含めたバック収納は収納量を充分に取る事はもちろんのこと、それでいて出来る限り扉の数を少なくして、スッキリとした印象にする事を目指した。ただ単純に大きな扉をボンボンと配置していけば少ない枚数で済むのだが、1枚1枚の重量や振り幅が大きい上に必要の無い箇所まで開閉される事になるので、衛生上も良くない。この辺りを考慮して導き出したゾーニングになっている。

また写真のようにトール部分の占める割合が大きい為視覚的に圧迫感の無いように、アイランド側の木目と同じ素材で納めた。全体としてボケてしまわないようコンロ下には限りなくダークグレーに近いカーキを採用している。オープンになっている家電収納部分の内部も木目で仕上げる事で、他の箇所から浮いて見えない、更に中に入る家電も目立たせない事に一役買っている。

引出内部には無駄なスペースが出来ないように、内引出や棚板を充実させるようにした。
こうして完成したキッチンだが、ビジュアルから始まり、使い方・ディテールによって「大人のカフェスタイル」という捉え方は人それぞれ違うのは当たり前だが、今回の事例はこのクライアント夫婦の個性にフィットしたものに仕上がった。

HS邸 Vol.1はこちら
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ライター:北澤武宏について

https://creators.view.cafe/takehiro_kitazawa/

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