私が独りよがりにならないようにならないためにしていること教えます/その2
前回は「客観的な視点を持つ」「ネット上での市場調査」について書かせていただきました。今回は「市場調査」の続きから書きたいと思います。
・実際に使われている現場を観察する
これから作ろうとするものは、実際にはどのように使われているのか。現場を観察することで、意外な発見があったりするものです。
1,駅の改札口の観察
尚貴堂の「Richt リヒト」はパスケースですので、まず、駅の改札口を通る人を観察しました。時間帯は、平日と休日それぞれの乗車数がピークになる頃。観察することで、交通系ICカードを使っている人がやっぱり大多数であるということ、そのカードは普段どこに収納してどのように取り出している人が多いのか、などといったことを知ることができます。
まず注目したのは、カードをどこに収納しているのか。大体パスケースと財布の2パターンでした。
・財布に収納している
①改札を通る直前に財布からカードを取り出す人が多い(取り出しに手間取って改札前で止まることが多い)
②財布を閉じたままタッチする人もいた(その際、財布は鞄から取り出す)
・パスケースに収納している
③ほぼ一般的なカードが1枚しか入らないタイプ
④鞄にストラップで繋いでいる人が多い(ほぼ女性)
細かいチェックポイントは他にもたくさんありますが、ここでは上記の点を挙げました。実を言うと、「Richt リヒト」は私自身が欲しかった形を追求して完成した商品なので、この市場調査から得られるものは商品の提案の仕方です。一般的にはモノが完成する前に市場調査し、需要に沿うように調整するのが望ましいと思いますのでご注意ください。
さて、まずはどういう需要が多いのかという分析です。まず第一に「多くの人は改札前で手間取りたくない」ということが見て取れると思いました。
①のパターンは、改札を通るということに特に工夫を凝らしていない、または凝らそうとしていない人です。改札前で止まってしまう人が多い人ですが、止まると後続の行列も止まってしまうので、きっと改善したいとは考えているでしょう。無頓着な人も一部いるでしょうが…
さて、ここからは工夫を凝らしている人たちについて。
②は、きっと接触エラー防止カードを財布に入れているか他のIC系カードを入れていないパターン。「改札前で手間取りたくない」ために、スムーズに通るための工夫を凝らしているのでしょう。
③、④はパスケースを使用している時点で、改札をスムーズに通りたいという意識の高さが見えます。そうした意識を持っているので、③のような1枚しかカードが入らないタイプを使っている人には、リヒトはきっと欲しいと思ってもらえるはず。
以上から、財布を使っている人もパスケースを使っている人も、改札はスムーズに通りたいと思っている人は多いと感じます。そこで、リヒトは今よりもさらに改札をスムーズに通れるということを売りの一つに掲げて提案することにしました。
加えて、④のパターンが多かったのは意外ではあったものの納得の使い方でした。パスケースは、鞄に収納するものとしては小さいので紛れてしまいがちですが、すぐに取り出したいものでもあります。同時に落としやすく、落としてしまうと大変困るものですので、鞄にストラップで繋げておくという行為は大変効果的。そこで、以下のような提案を加えています。
リヒトの天辺には紐を通すことができる場所があるので、そこに紐を通すことでストラップにも対応させることができる、というものです。
ストラップで繋げている人は、ほぼ女性。私は、パスケースは胸ポケットかパンツのポケットに入れて持ち歩くことが多いのですが、女性にはどのどちらもありません。鞄に収納することが多いので、そのような需要があるようです。盲点でした。
私のものづくりは自分を基準に進めているため、性別の違いによる使い方や好みの違いが盲点になってしまいがちです。こういった姿勢ですので、商品化する際の市場調査は必須なのです。気づけて良かった。
2,スーパーやコンビニのレジ
リヒトはパスケースですが、入れているカードの検索生が高いことから、財布として使っても便利です。私自身、クレジットカードや電子マネーでの買い物が主ですので、大抵リヒトをポケットに忍ばせておけばなんとかなっています。
そこで、この提案はどの程度効果的なのか、買い物の現場も観察しています。具体的には、コンビニやスーパーのレジでお会計をしている人を観察しました。
結論を言うと、現状では会計は現金で済ませる人が大多数で、カードのみ派は少数でした。コンビニでは電子マネー決済をする人も多少いましたが、まだ現金派が多いようです。
ただし、カード決済の方が便利であるという確信が私にはあるため、財布としてのリヒト利用はひっそりとしていきたいと思ってます。リヒトを気に入って購入していただける人は、そう言う利便性へのアンテナが高い人が多いと信じていますので。
以上、私が心がけている市場調査と、リヒトを提案する上で実践したことについてでした。尚貴堂の商品は、私が便利だと感じた体験を素にデザインしたものばかりですので、そのままでは独りよがりの作品止まりになってしまうでしょう。しかし、それでは商売としては成り立ちません。変わったものを作りながらも、ターゲットは多くの人々に向けるため、今後も市場調査を徹底してより良い提案ができるよう心がけるつもりです。
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