KTH邸キッチン施工例(3)
こちらでは収納部分に関しても拘りが有り、家電等の生活感や雑然とした雰囲気が出てしまうのを嫌われた為、隠せるものは隠せる場所にコンパクトに納めて欲しいと要望があった。炊飯器や電子レンジ等蒸気や熱の出る家電は、一般的にそれらが籠らない風通しの良い場所に置かれるのだが、この条件だけを重視すると家電の露出度は上がるばかりになる。よって熱や蒸気の出る時だけ、つまり使用する時だけ機器類を露出して、使わない時は収納してしまうという事。さらに言えば一々プラグをコンセントから抜いて収納するのではなく、次回使用する時にはすぐに出して使えるという利便性も重要である。ここでは「水平フリッパー収納」(写真)と呼ばれる部分が2箇所作られた。やはり炊飯器、電子レンジを含み、電気ケトルやトースターが収納されている。単に扉が開くというだけではなく、開いた扉は上部に引き込まれ、更にBOX内に仕込まれたスライド棚を引き出す事ができ、熱や蒸気を逃がす機能を満たしている。
家電の他に食器やカトラリー、調理器具、食品類のストックを収納するスペースもたっぷりと計画している。全部を使い切るには相当な時間が掛かるのではないだろうか。特徴というよりは基本の一つではあるが、腰から下の収納部分に関しては引出を多用している。低い場所の奥の物を手に取るには、引き出して見渡すことが出来、上から取り出す動作が容易だからである。これは年齢を重ねる毎に体への負担を減らし、キッチンでの家事のストレスを軽減する。低い場所の開き扉は、かがんで・覗き込んで・手を伸ばして…というように動作やストレスが増える。なるべく引出で提案することを心掛けているポイントでもある。
またコンロ下等のように幅が広く深い引出の部分は、大きな鍋やフライパン等を収納しても、上に空間が出来る事が多々ある。この場合は下段に入れる鍋等の数やサイズを把握した上で、内部上に内引出をセットする事も提案している。
先にも書いたが、オーナーであるご主人は常用の包丁を9本お持ちだというので、一箇所はシンク部分の前板の中に4本、壁面側に振り向いた所の引出の一部に5本収納スペースを確保している。包丁の収納の方法は、家族構成にも左右され、小さい子供のいる家庭では低い所や、すぐに開け易い場所は避けるとか、ロックが掛かる様にするとか、様々な収め方がある。またおいおい紹介していきたいと思う。
大手キッチンメーカーには少ない自由度やフレキシブル性が、個性を求めるオーナーには嬉しいのが、フルオーダーのキッチンである。1番に気にされるのはやはり予算の問題。どうしてもメーカーのシステムキッチンに価格競争で勝つのは不可能ではあるのだが、オリジナリティや高級感、仕口のクオリティや金物の性能等、見出して貰える価値観は限りない。納品後の顧客満足度もやはり高いので、新築やリフォームを考えている方々には「ウチには縁がない」と言わず一度チャレンジして頂きたい。
ライター:北澤武宏について
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