インパクトを与え、リピートを確保〔ホテルエスタシオン彦根(1)〕
某ホテルチェーンの影響や、会社の経費削減の対象となる出張客の減少等もあり、地方のビジネスホテルは苦戦を強いられているという。今回紹介する場所もその例外ではない。
大手家電メーカーの拠点や工場が多く点在し、観光地としても有名なこの地域は、以前は多くのビジネスマンの滞在拠点でもあり、某ゆるキャラの聖地として絶大な集客力を誇っていた。比較的交通の便も良く、駅前という事もあり、短期・長期に関わらず宿泊先として割と利用される地方の市街地である。
以前から比べるとこのビジネスホテルの客足だけにとどまらず、地域の観光客やビジネスでの動員も確実に減っているという。
そんな中で駅前周辺には大手ビジネスホテルが続々参入し、ネームバリューも手伝って多くはない客足を取り合う形になっている。
オーナーの息子であるS氏は、この状況を数年前から想定し、様々な仕掛けや業態を試行錯誤してきたが、目に見える実績は少なく、対策として効果的なものも明確には出て来ていないと言う。
「集客」という観点では厳しい状況下であるが、利用客と顧客にインパクトを与え、リピートを確保していく試みとしての改装をしたのが今回のプロジェクトであった。
ピロティを含めて7層37室を擁するこの建物は、元々2階にフロントがあり1階ピロティは外部で駐車スペースであった。この駐車スペースに非合理性を感じていたS氏は、別の利用法を考えていた矢先、とある出張先で見かけた小さなホテルのフロントにヒントを得たという。これをきっかけに使い方に疑問のあった1階の駐車スペースの約半分をガラスで囲み、室内空間にした上でフロントをここへ下ろした。これにより、外から見る事が出来なかったフロントが、客に安心感を与えるようになった。
ここに併設されたのが、今回紹介する売店である。単なるビジネスホテルのフロント横にある売店ではなく、宿泊者にステータスや優越感を感じさせるような特別な空間で、特殊なアイテムを売るスタイルだ。とは言ってもここで利益は殆ど求めていない。とにかく知名度や、リピーターの獲得を狙う。
40種類程の世界各国のビールやつまみを格安で買えて、その場で飲む事が出来る。手広く何でも揃うコンビニ的なスタイルは宿泊客にとってとても嬉しいが、こういった他所で手に入らないものに特化したやり方も、これはこれで話題性はあると思う。新しい試みの取っ掛かりとしては良い策であろう。
関連リンク:http://www.estacion-hikone.com/
ライター:北澤武宏について
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