我事に於いて後悔せず
剣豪・宮本武蔵の「独行道」の一条に「我事に於いて後悔せず」という言葉があります。
まだまだ未熟な私では、何度音読を繰り返しても、この言葉に込めた武蔵の真意は感じとることができませんでした。
そこで、二人の方の著書を手にしました。
一人は文芸評論家の小林秀雄さん。
もう一人は菊池寛さん。
小林氏は
自分は常に慎重に正しく行動して来たから後悔などせぬ。というような浅はかな意味ではない。自己批判だとか自己清算などということをしてみても本当の自分に出会うことはできず、自分をごまかすことになる。後悔などというおめでたい手段で自分をごまかさぬと決意しろ。そういう確信を武蔵は語るのである。
と、書かれています。
元々、難解で知られる小林氏の文章ですから、少し分かりにくいかもしれませんが「後悔などいくらしても無駄だ。もっと他にすることはあるだろう!」と、おっしゃっています。
菊池氏は、解説というよりも、読み方を重視していました。文頭の「我事」の部分です。
小林氏をはじめ、多くは「我が事」と読んだが、菊池氏は「我れ事」と読んだ。
「自分のことについて後悔などしない!」
自分に囚われることなく、自然の摂理を受け入れ、今を精一杯生きる。そういう覚悟が武蔵から感じとることができます。
私も今に止まることなく、前向きに今を生きることにしようと思えるのです。
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