弟子入り・カバン持ちの10ヶ月間
よく「川原さんのカバン持ちをさせて欲しい」
とか「弟子入りしたい」って、言って来る方がいます。
基本的に、断ってますけどね。汗💦
それが、どんな意味なのか?
わかっていないから、仕方ないですよね。
僕は22歳のときに、ある方を勝手に師匠と決め、その方のそばに置いて欲しくて、かばん持ちを志願し、許可を頂きました。
その翌朝から5時にご自宅に伺い、23時まで、できるだけそばでお仕えするというのを、10ヶ月間させて頂きました。
(自分の会社は番頭に任せて、毎晩24時〜25時だけ書類に目を通す)
弟子入りしたとは言え、何か教えて頂ける訳ではありません。ただただ、そばでお仕えしながら、その言動や立ち振る舞いから、盗むしかありません。
5時にご自宅の裏口から入れて頂き、掃除道具をお借りして、 ご自宅の向こう3軒両隣りまで通りを掃除し、ご自宅の庭や玄関先の掃除をしながら、師匠の読む新聞が配達されるのを待ちます。
6時頃、新聞が届くと、あらかじめ奥様に許可を頂いていたアイロンをお借りして、新聞3紙にアイロンをかけ、刷りたてのインクが手につかないよう、新聞を乾かします。
(ちなみに、キレイにアイロンをしておくと、師匠が読み終えた新聞を見せて頂くと、師匠がどこに興味を持たれ、どんな読み方をされたのか、想像できるんですよ)
そして、玄関の中、トイレの掃除を済ませた頃、師匠は起きて来られます。
すると間もなく、師匠の秘書兼運転手さんが来られます。
秘書さんに今日一日の師匠のスケジュールを教えて頂き、全てに先回りする計画を立てます。
もちろん、同席なんてさせて頂ける訳がありません。ただ先回りし、そして待たせて頂く。それだけ
師匠は年商200億ほどの小さな商社を経営されていました。出先では、商談や会議、会合、会食などが行われます。
ある取引先様との会議・商談は、2時間の予定でした。
4階建ての本社ビルをお持ちの取引先様です。
受付の女性にご挨拶し
「今、商談でお邪魔させて頂いている◯◯のカバン持ちで、川原と申します。商談の間、待たせて頂くだけでは申し訳ございませんので、トイレの掃除をさせて頂く許可を頂けないでしょうか?」
と、申し出ます。
師匠のことをご存知だった受付の女性は、即座に快諾くださいました。
全部で5ヶ所。
トイレを掃除しながら待つと、2時間はあっという間。
ある日は、取引先の問屋さん。
その日は師匠に「外で待つように」と言われていました。
師匠は意味のない指示はされない方。外で待つようにと言われるには、必ず意味があると感じました。
先回りしている僕を見つけると、師匠はかぶっていた帽子を黙って僕に渡し、お客様の会社(お店)に入って行きます。
季節は初冬、外は雨。
師匠の帽子を濡らさないよう、そして潰さないように、そっと懐にしまい、傘を刺して約2時間強。
師匠は出て来ると「乗りなさい」と車の、しかも師匠の隣り、後部座席に座るように言ってくださいました。
しかし僕はびしょ濡れです。
「車が汚れます」
と、遠慮すると師匠は「車は汚れたら洗えばいいさ」と微笑まれました。
一々、カッコいいんです。
車に乗ると、師匠は僕に「どうだった?」と、ひと言。
もう必死で話しました。
店先で待っている間に
- 何名のお客様が来店し
- それがどんな方々か
- どんな商品が搬入され
- 店先でどんな会話がされ
- どんな様子だったか
- などなど
僕がひと通り話し終えると
「川原くん、キミならあの会社に何を提案するかな?」
と、質問されました。
僕は「メーカー直送」と答えました。
店先は人の出入りも多く、搬入された商品、出荷する商品が入り乱れ、従業員もお客様も忙しくイライラしており、誰かのミスを誰かが罵倒し、愚痴や言い合いが絶えないのです。しかし営業力の強さは感じました。問題は営業力に事務や物流(倉庫)が追いついていないことだと感じました。
師匠は「よく観察できたな。やってみるか?」と言われました。
僕は即答「全力で頑張ります」と返事。
師匠に言われたら全て「はい」と返事をすると決めていたんです。
この案件は、師匠の秘書と営業課長に相談して、3週間後に提案し受注できました。
僕は、ただの押しかけカバン持ち。仕事の功績は、課長に譲らせて頂きました。
その夜
秘書から「今日は銀座に付き合うように」と言われました。
僕が持っていた中で一番いいスーツを着て行くと、お店には作務衣に草履を履いている師匠がいらっしゃいました。
高級クラブの店内が一望できる、いわゆる「VIP専用席」でした。
席につくと、師匠は静かに話し出しました。
川原くん、キミの素晴らしさは、その「観察力」と「創造力」だとボクは思うよ。きっとお婆さんやご両親の育て方、それと、大勢の人と一緒に暮らしていたからだろうな。
その授けて頂いた能力を、存分に発揮できればキミは夢や目標を叶えられると思う。
反面、目の前のことに集中し過ぎるのが、キミの弱いところだと思う。観察眼を活かすためには、鳥の目を持つことだ。
そして創造力。『創造力とは相手をおもいやる心』のことだね。観察し感じたことから相手のためにどうしたらいいのか?考えるチカラ。それが創造力だ。
ところで、あのメーカー直送をご提案させて頂いた問屋さま、あの提案でキミの気づいた問題は解決されたかな?
僕が答えられずにいると・・・
メルマガで、つづきを書く予定です。
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