苦難福門
苦難は、すなわち福の門(入り口)だよ。
母の教えです。
僕が、苦しさから逃げようとしたときに、たった一度だけ、母に叱咤されたときの話しです。
母は、昭和29年に封切られた4本の映画や文学の話しをしてくれました。
一本目は巨匠・黒澤明監督の「七人の侍」
未だに日本映画100選などでは上位にランクインする名作で、封切りから数年後にはアメリカで「荒野の七人」としてリメイクされたほどの名作です。
二本目は文学から山本周五郎さんの名作「樅ノ木は残った」です。著者の没後数十年たった今でも書店に並んでいる、やはり名作です。
この他に、木下恵介監督の「二十四の瞳」や「ゴジラ」なども昭和29年の公開です。(ここでゴジラを出すあたりが、やんちゃ息子を育てた母らしさかな?笑)
太平洋戦争に敗れ、焦土と化した日本で、もう少しで戦後10年を迎える直前の苦難の中で、多くの人々に感動を与え、永年にわたって影響し続ける作品を、母は教えてくれました。
そして、これらの作品は全て、苦難の時代が描かれています。
「七人の侍」は、野武士の略奪に苦しむ農民を七人の侍が命をかけて助ける話し。
「樅ノ木は残った」は幕府による伊達藩取りつぶしの陰謀から、何とか藩を救おうとする物語。
「二十四の瞳」は小豆島の女性教員と12人の子どもたちが貧しさや戦争に翻弄されながらも健気に生きて行く物語。
そして「ゴジラ」は、核実験によって目覚めた怪獣が東京を襲う話しです。
どの作品も、苦難や災害に際しても、希望を持ち未来を信じて前向きに立ち向かうことの大切さを教えています。逃げてはならない。と、教えてくれます。
しかも、苦難に立ち向かったのは作品の登場人物だけではありませんでした。
黒澤明監督の「七人の侍」は、予算オーバー、撮影期限オーバー、映画会社倒産危機などで何度も製作中止の声があがります。ただただ監督の「よい映画を作りたい」の信念と意欲で完成にこぎつけたそうです。
山本周五郎さんも作家として不遇の時代が長い人でした。いわゆる「売れない作家」だったのです。しかし人間真実を一点一画もおろそかにしないで描き切ったのは、自分を信じ己を貫くために、常に清貧に勤めたからです。
どの作品も、こうして長い不遇やニッチもサッチも立ち行かない状況を跳ね返して、前向きに努力を重ねた末に完成したのだと、母は教えてくれました。
最後に母は【つらいだけならやめなさい。でも、ほんの少しでも好きなら死ぬまで頑張りなさい】と言いました。
息子としては、まさか母に「死ぬまで頑張れ」と言われるとは思いませんでしたが、頑張ろうと思いましたね。死ねませんでしたが 汗
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