眠れる美女
自身、コチラのコラムで1冊の小説を採り上げるのは、初めてかもしれません。
しかも、日本人ではじめて、ノーベル文学賞を受賞された文豪の作品です。
『眠れる美女』 川端康成著 新潮文庫
タイトル作品の他、短編が2編。
そのタイトル作品も、20ページ程度の物語、5本で構成されています。
タイトル作品の内容は、男性機能を失った老人が、秘密の館にて、生まれたままの姿で眠らされた若い娘に添い寝する、ただそれだけの物語です。
女性蔑視と受けとめる読者もいるかもしれません。
若い娘をモノとして扱っていると曲解されても仕方がないシチュエーションです。
しかしながら、小生、この物語は、ひとつの女性崇拝のあり方を表現した作品なのではないかと理解しています。
主人公の江口老人は、その秘密の館を初めて利用した直後は、二度と足を運ばないだろうと思っていました。
ところが、そんな思いは、半月ほど経過して、忘れ去られてしまいます。
そして、三度目の再訪は、その8日後。
死期が近づく老体から湧き上がる、今生への欲望の現れなのか、その境地に至っていない小生では、理解不能な行動です。
それでも、この小説の醍醐味は、そんなシチュエーションに身を置いて、自分自身の所作を想像することにあるとも思えます。
そう思うと、この小説、R15指定というより、R75指定という様相です。
そして、この物語は、救いようのない、衝撃的な結末で幕を閉じます。
解説を担当された、三島由紀夫さんも、
怖ろしいトドメの一言によって閉じられる
と描写されていますが、救いようのないとは、まさにこのラストシーンを表す一言でしょう。
しかしながら、続く短編小説『片腕』のオープニングのフレーズで、ページをめくる指が止められなくなってしまいます。
「片腕を一晩おかししてもいいわ。」と娘は言った。
天才ですね・・・
そして、視点を変えれば、多くの学びを得ることができる逸品でもあります。
ビジネス本としてとらえてみれば、上得意様からリピートいただくお手本のようなビジネスモデルかもしれません。
労働集約型産業の典型ですから、価格設定が肝と思われますが・・・
実は、コチラの作品、女優の杉本彩さんが、雑誌の書評で大絶賛されていたのは見かけたことが書縁でした。
こんな辺りも、女性崇拝がテーマと、うかがい知ることができますよね。
未読の方は、是非オススメします。
如何に自分という人間がノーマルなのかと、再認識できますので。
そんな意味では、自分自身を見つめ直す機会をいただける、そんな作品かもしれません。
今回もお役に立てれば幸いです。
ではでは。
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