正座が苦手でも、茶室に入ると自ら正座をしたくなるのはなぜ?

市川弘美

 

茶道のお茶会にお誘いすると、必ず聞かれることがあります。
「正座ができないけど、大丈夫?」

もちろん、「大丈夫です。脚はくずしていただいて、かまいませんよ」とお伝えします。

 

ですが、実際は、お席のあいだは正座をされている方がほとんどなんですよ。
それもムリなく。

自然と正座をしたくなるんですよね。

 

「くずしてくださいね」と言うと、
「いえ、まだ大丈夫です」というお返事。

 

最後まで正座をしたままいらっしゃることも、少なくありません。

なぜだか、茶室に入ると、自然と背筋が伸びて、苦手なはずの正座をしたくなります。

ムリにしてるんじゃないんですよ、正座を「したくなる」んです。

それは茶の湯の持つ不思議さであり、良さであり、人の柔軟さでもあるのだと思います。

畳は拭き清められ、掛け軸がかかり、花が生けられ、炭火に香が焚かれ、鉄釜にお湯が沸いている。
そんな茶室という場のなせるワザなのでしょうね。

 

伝統的なものは、「かたくるしい」「正座がダメだから」と敬遠されがちですが、入ってしまえば、ムリなく自然と正座になります。

そして、お菓子と抹茶の味は格別で、その場をとても楽しんでいただけます。

 

 

今の世の中、新しい情報を仕入れ、新しい方法をチャレンジして、何だか新しいことについて行かなくちゃいけない雰囲気ですよね。

そんな時代だからこそ、日本の伝統的な場に身をおき、心を静めて時を過ごすことは、とても大切なことかなと思います。

日常が「動」なら、非日常の「静」「閑」も必要なわけです。

 

茶室で心静かにお抹茶をいただく、そんなときは、あぐらをかいたり脚をくずしているほうが、かえって居心地がわるかったりします。

正座が苦手と思い込んでいると、正座だと落ち着かないと予想しがちです。
でも、茶室では、正座をして背筋をのばしているほうが、実は、心を落ち着けることができるんです。

 

 

Copyright © 2018 侘び・寂びの視点|wabi-sabi.view All Rights Reserved.

コメント

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

市川弘美

茶道の楽しさや「和」への感性、そして侘び寂びの「美」について、「茶の湯」のことを分かりやすい表現で文章にし、読者の皆さまへお届けします。

こちらの記事もおすすめ

  1. 優しくない、がコンプレックスでした。

  2. 折り目正しいのに、息抜き。

  3. 陶器と磁器のちがい/茶の湯ライターが分かりやすくつづる茶道マメ知識

  4. 一服のお茶も「一期一会」。

  5. 和菓子の魅力②開けないでずっと眺めていたいパッケージデザイン

  6. 「はじめての着物」の次に買う着物は?

  1. 空を飛べる鳥は自由なのか?(自由と権利は、責任と義務にセットで…

    2018.07.03

  2. ご利益ハンパないって!

    2018.06.26

  3. ​大人女子でも楽…

    2018.06.18

  4. 名城の「味付けスパゲッティ」を食べよう!

    2018.06.18

  5. ロンドンの常識なの?イギリスの?

    2018.06.18

  1. 名古屋城本丸御殿がいよいよ完成! さっそく行ってみたがね~!

    2018.06.09

  2. そんとくのかんじょう

    2018.06.09

  3. ボディケアの妊活③ ファンデーションも作ってしまおう

    2018.06.08

  4. 好きなことがある人生

    2018.06.06

  5. 心と体~漢方医学アロマでアロマを使う~

    2018.06.05

Viewトレンド