空海の風景・・・司馬遼太郎の最高傑作
蔵書家の視点を担当して、本日で4年目に突入しました。
担当して、といっても月に2冊のペースですので、本日で73回目の投稿です。
今回節目ということで、過去3年間の投稿を振り返っていたのですが、あの文豪の著書を紹介していなかったことに気づきました
その文豪とは、歴史作家の司馬遼太郎さんです
司馬遼太郎さんといえば、コチラのコラムを担当する以前、2017年7月に東大阪市にある司馬遼太郎記念館を2週連続で訪問していたことが想い出深いですね
司馬さんの作品は、エッセイ、紀行文、対談、鼎談、そして本領発揮の歴史小説と、様々なスタイルを愉しんでおりますが、自身イチオシは『坂の上の雲』だと想い込んでいました
しかしながら、つい先日の実践読書を通じて、その認識が改まることに
そのイチオシ認定したタイトルは『空海の風景』です
今回の再読後、コレはスゴイ本だと感嘆し、ググってみると、司馬さんご自身が生前最も気に入っていた作品が『空海の風景』だと知り、自己肯定感を高めることにも
あとがきで紹介されている、司馬さん自身の密教体験が、中学1年生の夏休みに大峯山へ登拝したことというエピソードも、何だか親近感を覚えますね
※小生の場合、四十路半ばが初体験でしたが・・・
そして、空海が伝えた正密という体系的密教よりも、その先駆的存在である役行者の雑密、所謂修験道に親近感を抱いたということも
あとがきでは、真言立川流にまで言及していますので、未読の方には是非堪能いただきたいものですね
ちなみに、司馬さんはこの作品を書くにあたって、いっさい仏教の術語を使わないと決めて臨まれたようです
・空海における真言密教の中には型どおりの仏教的厭世観は淡水の塩気ほどもない
・人間における性の課題を空海ほど壮麗雄大な形而上的世界として構成し、かつそれだけでなくそれを思想の体系から造形芸術としてふたたび地上におろし、しかもこんにちなおひとびとに戦慄的陶酔をあたえつづけている人物が他にいたであろうか
・男女交媾の恍惚の境地は本質として清浄であり、とりもなおさずそのまま菩薩の位である
・日本における仏教の受け入れ態度はあくまでも効能主義であった
・おそらく人類がもった虚構のなかで、大日如来ほど思想的に完璧なものは他にないであろう
・空海がみずから感得した密教世界というのは、光線の当てられぐあいによってはそのまま性欲を思想化した世界でもあった
・恵果は空海を教えることがなかった。すべて空海が独学したものを追認しただけである
・現世を否定する釈迦の仏教に対し、現世という実在もその諸現象も宇宙の真理のあらわれであるということを考えた密教の創造者
・三密とは、動作と言葉と思惟のことである
サピエンス全史もビックリと思えるほどのフレーズのオンパレード
歴史小説というより、司馬遼太郎の手による思想書といった印象です
司馬作品を読んだことが無い方も、この作品から手に採っていただきたい
そんな想いが湧きがってくる4年目スタートの蔵書家の視点です
今回もお役に立てれば幸いです
この記事へのコメント